2012年7月22日日曜日

「アメリカのデモクラシー/トクヴィル著」について語る

 最近「アメリカのデモクラシー(第1・2巻)/アレクシス・ド・トクヴィル著(岩波文庫)」を読んだのだが、あまりにも内容が素晴らしかったのでコメントを書く事にした。もともとこの本に興味を持ったのは、内田樹が幾つかエッセイの中でアメリカを理解するには最も有益な書として紹介していたのがきっかけで知ったものであり、いつかは読もうと思っていたものである。

 この本は、1831年に貴族階級の青年だったフランス人のトクヴィルが、フランス革命後の政府につとめながら、アメリカの制度を研究を行うという名目で、アメリカを約9ヶ月間調査してまわったことをまとめた書籍である。政治や文化の研究や考察をメインとした書籍だが、専門用語などは少なく、文章は比較的理解しやすいものだ。だがその内容は非常に密度が高く、私は一回一通りめを通したが、どうしても十分に内容を消化できたとはいえない。
 しかしそれでも、あまりにも内容がすばらしく、示唆に富んでいるのでこの本を読み終わった直後として、所感や考えた事などを述べてみたいと思う。

 アメリカのデモクラシーの構成は、主に次のようなポイントで記されている。

<第一巻>
・アメリカが成立した地的条件、最初に建国した人々とその歴史的な背景
・アメリカ固有の条件と、政治体系
・アメリカの奴隷制が抱える課題など
・アメリカの文化と、デモクラシーを成立および繁栄させている背景など

<第二巻>
・デモクラシーがアメリカの人々に与えた影響
・デモクラシーが人々の考え方や性質をどう変えたのか、変えてゆくのか
・デモクラシーが今後どのようになるか、他の国で実現する際の問題や可能性など

 上記は私なりの強引なまとめ方だが、この書を構成するトクヴィルの視点は主に次のスタンスで語られている。

・なぜアメリカでは最もデモクラシーが発展したのか? 
・他国との条件の違いは何か? 他国でも同様の繁栄が可能か?
・デモクラシーは貴族専制社会から、人々や文化や産業をどう変えてゆくのか?
・デモクラシーが変えた人々や文化は今後どのような経路をたどるのか、その未来と問題点はなにか?

 
 私がこの本を読み驚いたのは、トクヴィルの洞察力の凄さである。彼は当時はまだ25歳の若者だったが、その慧眼や教養はまさにおそるべきものがあり、200年前にこれほど優れた教養人が存在したという事がまず衝撃だった。
 そしてこの本はアメリカの事を、そして我が日本など他の国々の民主主義や社会などを理解する上での最も優れた書籍だと思う。トクヴィルは後に政治家としても活動するが、この書籍は政治だけではなく文化や人間の進化や歴史までも含めた、幅広い視点の考察によりかかれている。本当に私が驚いたのは、現在が抱える多くの問題などを、既にトクヴィルが200年前に可能性として予見し、どうあるべきかなどといった事についても考察をしている事である。

 もちろんアメリカは以後おおきく変化している。トクヴィルが知っていたアメリカとは領土も人工も大きく違うし、世界との地政学的なかかわりも変わっている。だがこの本の中には、デモクラシーが人々を変えて、社会がどのように変えてゆくかの可能性がかかれており、私は概ねこの予見は的を得ていると感じる。
 例えば第二巻第四部について述べているのを読めば、言葉は違えど、現在のグローバル化した社会が抱える危惧についての指摘とも読み取れる。200年前に、すでに現在の問題や課題が予見されているのは驚きとしたいいようがない。


 そしてこの本が素晴らしいのは、政治の本ではないからだ。仮に政治学的な視点だけをたよりにデモクラシーを語るならば、それはおそらくは無味乾燥な空論に聞こえるだろう。トクヴィルは歴史・文化・宗教などをベースに、デモクラシー成立の背景と、それを支える力についても考察し、検証をしている。だからこの本は別にデモクラシーについてあまり興味が無い人でも、社会や歴史を知るという観点からでも有益かもしれない。まだ読んだ事の無い人には、ぜひお勧めしたい本である。

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